スーパーカブものがたり 1話~3話をまとめてみた。

納屋に一台の小さなバイクがある。

おじいちゃんは いつもその小さなバイクをいつも見つめている。

数年前まで よく磨いていた小さなバイク

今は見つめているだけ






西暦2045年


各メーカーがガソリン車の生産を中止してからガソリン需要も減り政府は環境税を導入

石油製品に膨大な税金を掛けてきた。

飛行機まで電動化された現代では当然の事とし反対する者もいなかった。


じいちゃん これ何?



カブじゃ


言葉少なく爺ちゃんは答えた。


カブ? モーターバイクか?



スーパーカブといってガソリンで動くバイクじゃ


電動のバイクしか知らない少年には理解できないようです。

納屋の壁には爺ちゃんの若いころの写真が額縁に入れて大事に飾ってある。

爺ちゃんはこのカブで旅をしていたようだ。

仲間達と楽しそうにキャンプしている写真を見て思い出に浸る日々のお爺ちゃんである。


今も走るん?



ああ 走るさ 乗ってみるか?



乗ってみたいけど難しそう。



な~に 簡単な事だよ。


毎日整備してピカピカのカブ 今では貴重なガソリンを1リットル入れる。

爺ちゃんは膝や腰が悪いのでエンジンを掛ける事ができない。


キーを差し込んでオンにする



キーってなに?

そこからか・・・

時代の流れを感じる爺さん。はぁ~


次にチョークを引っ張って ここをキックするのじゃ



いいか アクセルを開けてはダメじゃ かぶってしまうからな


言っている事かさっぱり 言われるまま 3回キックでエンジンは掛かった。


チョークを戻して 吹かしてみろ


電動にはない鼓動が心を揺さぶる。爺ちゃんもニンマリだ。


メーターに緑のランプが点いているだろ。 これがニュートラル


???少年は理解しようとするが???


三速ミッションだからな このペダルの前を一回踏んでみな



これが1速目だ ちょっと乗ってみな



おお 走った でも遅いな



もう一度ペダルを踏んで2速 そして速度に合わして3速目まで入れてみな



速くなったよ。 凄いよこれ



止まったらニュートラルに戻して今の順番で走るんだ。


何とも言えないマニュアル感が少年の心を揺さぶったのであった。

再び動き出したスーパーカブ

この時代では2輪のバイクも電動化や自動運転が当たり前になっている。

一部の愛好家だけがヴィンテージとして所有しているのです。

電動化されたスーパーカブは今も販売されレトロ調に復刻されたのもある。

復刻版は形だけで中身は電動仕様なのです。

そんな中 少年はマニュアル感満載のこの古いカブの虜になってしまった。

喜ぶ姿を見てお爺さんは少年にしばらく乗っていいと快く貸し出す。




もう一台のカブとの出会い


ある日少年がカブに乗っていると おじさんに呼び寄せられる。

なかなか渋いのに乗っているな。
エンジンの音がたまらないね。
どうしたん?そのバイク

若い少年が乗っているのに不思議に思い声をかけてきたらしい。


爺ちゃんのバイクです。
借りて乗っています。




それってスーパーカブだろ
家にも同じようなのがある。
実は死んだ親父が乗っていたのだけど捨てられなくてな。
タイヤも腐って錆も出ているからもうダメだろうな。


爺ちゃんが言ってたけど
このカブってバイクは強いバイクで修理すればいつまでも走るらしいですよ。

おじさんは親父の形見のカブをもう一度走らせたい一心で少年にお願いしてみる。


もしよければ お爺さんを紹介してもらえませんか?
バイクは私が運びます。



いいですよ。

そして お爺さんの納屋に運んだのです。


始めまして このバイクまた走るようになりますかね?


C50か これなら何とかなるかも

お爺さんには大変な作業だと少年は思っていましたが
カブも見た瞬間 お爺さんは若返ったようにイキイキしている。

納屋の奥に大きな箱が二つある。
一つはタイヤとチューブと新品のパーツがぎっしり
もう一つは古いジャンクパーツがぎっしりでした。


これは全部カブのパーツだよ。
いつか手に入らなくなる前に集めたものさ


そんな貴重な部品貰っていいのですか?


ええよ。
ここで眠っているよりもう一台のカブが復活する方がいいじゃないか。

そして カブのレストアが始まるのです。

修理に持って来たもう一台のカブのレストアが始まりました。




懐かしいカブ 

作業を始めようとする お爺さんの手が止まった。


このカブ もしかしてケンジのカブか?
あんたの親父さんはケンジなのか?


そうです。親父の名前はケンジです。
親父を知っているのですか?


知ってるも何もワシにカブの魅力を教えてくれたのがケンジや。
あいつのカブを見て ワシは、このカブを買った。
このステッカーでわかったよ。これはケンジが乗っていたカブだと。




ワシのカブは最後のキャブレター仕様のAA01
FI化されたカブはもうすでに発売されていたが
ケンジにキャブ仕様をすすめられて中古を探して買った新古のカブだよ。


FIとかキャブってなに?



電動化された現代ではFIもキャブレターも知らないのは当然やね
簡単に言えばキャブレターは機械式で燃料と空気を調整してFIはコンピューターで燃料を噴射する装置なのじゃ
そういえばケンジは上手い事言っていたなぁ






2008年の初夏



ケンジ 今日 俺のカブ納車だよ。
なんでFI車が発売になったのに なんでキャブなんだよ。


FIは夏でも冬でも安定して走れるけどキャブはひと手間掛けないとダメなんや。
そのひと手間で愛着が出ていつまでも乗りたくなる特別なカブになる。
キャブ車は生き物でFI車はロボットって感じだね。


今日 納車か 
天気もいいし ちょっとラーツーでも一緒に行かないかい。


ラーツーって何?


ラーメンツーリングでラーツー
今 流行ってるんよ。
インスタントラーメン持って近場のツーリングや


いいね。行こう!



湖畔に到着



なかなか調子良さそうだね。
あのバイク屋のおっちゃんもキャブ車が好きって言っていたやろ
おっちゃんも古いカブのオーナーやねん。


ああ 言っていた。
いつまでも乗れるカブやから大事にしてやって言って売ってくれたよ。


ラーメン作る前に並べて写真でも撮るか。


いい写真やね。
ザクとグフが並んでるみたいや。
ガンダム世代はそんな風に見てしまうわ。www


なあ ケンジ 俺このカブ気に入った
一生乗るつもりや。
いろいろ教えてや。


ええよ。
ただ 時代が進むにつれて手に入らないパーツも出てくる。
このキャブ車も新車では手に入らないだろ。
今の内に予備パーツを集めなあかんな。
わからん事あったら何でも聞いてや。


ありがとう ケンジ 頼りになるなぁ。




2045年 初夏



流石 ケンジのカブや
消耗品のタイヤとチューブ交換してキャブの清掃で直ったよ。
ケンジもあの世で喜んでいるかな?

また走りだすよ。

今日は あのラーツーに行った日のような初夏の天気だな。



そう言ってお爺さんは額縁の写真を懐かしく眺めるのであった。


おしまい。










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